利息制限法の適用に関する最高裁判決

 

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1.      昭和391118日最高裁大法廷判決(民集1891868頁)

 

昭和391118日判決は、4口の別口の債務のある事案において、

「債務者が利息制限法所定の制限を超える金銭消費貸借上の利息・損害金を任意に支払ったときは、右制限を超える部分は民法491号により残存元本に充当されるものと解するを相当とする。したがって、右と見解を異にする当裁判所の判例(昭和37613日大法廷判決)は、これを変更すべきものと認める。」

 「債務者が利息、損害金の弁済として支払った制限超過部分は、強行法規である本法1条、4条の各1項により無効とされ、その部分は存在しないのであるから、その部分に対する支払は弁済の効力を生じない。従って、債務者が利息、損害金と指定して支払っても、制限超過部分に対する指定は無意味であり、結局その部分に対する指定がないのと同一であるから、元本が残存するときは、民法491条の適用によりこれに充当されるものといわなければならない。」

 「本法2条は、契約成立の際に債務者が利息として本法の制限を超過する金額を前払しても、これを利息の支払として認めず、元本の支払に充てたものとみなしているのであるが、この趣旨からすれば、後日に至って債務者が利息として本法の制限を超過する金額を支払った場合にも、それを利息の支払と認めず、元本の支払に充当されるものと解するを相当とする。」

「更に、債務者が任意に支払った制限超過部分は残存元本に充当されるものと解することは経済的弱者の地位にある債務者の保護を主たる目的とする本法の立法趣旨に合致するものである。」と判示した。

 

 

2.      昭和431029日最高裁第三小法廷判決(民集22102257頁)

 

昭和431029日判決は、債権者と債務者間に数口の貸金債権が存在し、弁済充当の順序について特約が存在する場合において、

 「債務者が利息制限法所定の制限を超える利息を任意に支払ったときは、制限を超える部分は強行法規である同法1条、4条の各1項によって無効とされ、その部分の債務は存在しないのであるから、その部分に対する支払は弁済の効力を生じないものである。したがって、本件のように数口の貸金債権が存在し、その弁済の充当の順序について当事者間に特約が存在する場合においては、右債務の存在しない制限超過部分に対する充当の合意は無意味で、その部分の合意は存在しないことになるから、右超過部分に対する弁済は、充当の特約の趣旨に従って次順位に充当されるべき債務であって有効に存在するものに充当されることになると解すべきである。」と判示した。

 また、「右のような場合における充当の関係は法律問題に属するから、これについて所論のように当事者からの特別の申立ないし抗弁の提出されることを要するものではないと解するのが相当である。」ということも判示した。

 

 

3.      昭和431113日最高裁大法廷判決(民集22122526頁)

 

「債務者が利息制限法所定の制限を超える金銭消費貸借上の利息・損害金を任意に支払ったときは、右制限を超える部分は、民法491条により、残存元本に充当されるものと解すべきことは、当裁判所の判例とするところであり(昭和35年(オ)第1151号、同391119日言渡大法廷判決、民集1891868頁)、論旨引用の昭和35年(オ)第1023号、同37613日言渡大法廷判決は右判例によって変更されているのであって、右判例と異なる見解に立つ論旨は採用することができない。」

 「思うに、利息制限法1条、4条の各2項は、債務者が同法所定の利率を超えて利息・損害金を任意に支払ったときは、その超過部分の返還を請求できない旨規定するが、この規定は、金銭を目的とする消費貸借について元本債権の存在することを当然の前提とするものである。けだし、元本債権の存在しないところに利息・損害金の発生する余地はなく、したがって、利息・損害金の超過支払いということもあり得ないからである。この故に、消費貸借上の元本債権が既に弁済によって消滅した場合には、もはや利息・損害金の超過支払いということはあり得ない。」

 「したがって、債務者が利息制限法所定の制限を超えて任意に利息・損害金の支払を継続し、その制限超過部分を元本に充当すると、計算上元本が完済となったとき、その後に支払われた金額は、債務が存在しないのにその弁済として支払われたものに外ならないから、この場合には、右利息制限法の法条の適用はなく、民法の規定するところにより、不当利得の返還を請求することができるものと解するのが相当である。」

 

 

4.      昭和441125日最高裁第三小法廷判決(民集23112137頁)

 

昭和441125日判決は、債務者が利息制限法所定の制限を超えた利息・損害金を元本とともに任意に支払った場合においては、その支払にあたり充当に関して特段の意思表示がない限り、右制限に従った元利合計額を超える支払額は、債務者において、不当利得として、その返還を請求することができると判示した。

 

 

5.      昭和46330日最高裁第三小法廷判決(判例時報62845頁)

 

「民法491条によれば、数個の債務について元本のほかに費用および利息(遅延損害金を含む)を支払うべき場合において、その債務の全部を消滅させるに足りない給付をしたときは、費用、利息、元本の順序により充当すべきであるが、同条2項により、それら数個の債務の費用相互間、利息相互間、元本相互間における充当方法について同法489条が準用される結果、数個の債務についての費用、利息は各債務の元本より先に充当されるべきものとなる(大審院大正2年(オ)第560号同4217日判決、民録21115頁、最高裁第二小法廷昭和27年(オ)第700号同29716日判決、民集871350頁参照)。」

 

 

6. 平成449日 東京地裁判決

 

利息制限法の制限利率を超える利息を支払ったことを理由とする過払い金の不当利得返還請求は、その構造上、貸付及びこれに対する利息制限法の制限利率を超える利息の支払いを請求原因として、主張することになり、同一当事者間で、貸付、返済が繰り返されている場合においては、原告においては、過払いとなっているとする期間の取引経過を主張すれば足りる。

 

 

7. 平成11121日最高裁(民集53198頁)

 

 「利息制限法所定の制限を超える利息が、貸金業の規制等に関する法律431項によって有効な弁済とみなされるためには、右の支払いが貸金業者への払込みによってなされたときでも、払込みを受けたことを確認した都度、直ちに同法181項に規定する受取証書を債務者に交付しなければ、有効な利息の債務の弁済とはみなされない。」

 

 

8.      平成15718日最高裁第二小法廷判決(民集577895頁)

 

 原審の充当に関する判断のうち「過払い金が他の債務に充当されるとの判断は是認することができるが、この場合に一審被告が充当されるべき元本に対する約定の期限までの利息を取得するとこができるとの判断は是認することができない。その理由は次のとおりである。」として、複数の貸付の別口に対する充当を無条件で是認したそのうえで、次に、その理由として、

「同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸付とその返済が繰り返される金銭消費貸借取引においては、借主は、借入れ総額の減少を望み、複数の権利関係が発生するような事態が生じることは望まないのが通常と考えられることから、弁済金のうち制限超過部分を元本に充当した結果当該借入金債務が完済され、これに対する弁済の指定が無意味となる場合には、特段の事情のない限り、弁済当時存在する他の借入金債務に対する弁済を指定したものと推認することができる。」

 「また、法11項及び2条の規定は、金銭消費貸借上の貸主には、借主が実際に利用可能な貸付額とその利用期間とを基礎とする法所定の制限内の利息の取得のみを認め、上記各規定が適用される限りにおいては、民法1362項ただし書の規定の適用を排除する趣旨と解すべきであるから、過払い金が充当されるべき元本に対する期限までの利息の発生を認めることはできないというべきである。」

  「したがって、同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸付とその返済が繰り返される金銭消費貸借取引において、借主がそのうちの一つの借入金債務につき法所定の制限を超える利息を任意に支払い、この制限超過部分を元本に充当してもなお過払金が存する場合、この過払金は、当事者間に充当に関する特約が存在するなど特段の事情のない限り、民法489条及び491条の規定に従って、弁済当時存在する他の借入金債務に充当され、当該他の借入金債務の利率が法所定の制限を超える場合には、貸主は充当されるべき元本に対する約定の期限までの利息を取得することができないと解するのが相当である。」

 

 

9.      平成16220日最高裁第二小法廷判決(民集582380頁)

 

 「貸金業者が、貸金の弁済を受ける前に、その弁済があった場合の貸金業の規制等に関する法律181項所定の事項が記載されている書面で貸金業者の銀行口座への振込用紙と一体となったものを債務者に交付し、債務者がこの書面を利用して同銀行口座に対する払込みの方法によって利息の支払いをしたとしても、同法431項の適用要件である同法181項所定の要件を具備した書面の交付があったということはできない。」

 

 

10. 平成16220日最高裁第二小法廷判決(民集582475頁)

 

 「貸金業者との間の金銭消費貸借上の約定に基づき利息の天引きがされた場合における天引利息については、貸金業の規制等に関する法律431項の適用はない。」

 

 

11.      平成17719日最高裁第三小法廷判決(民集5961783頁)

 

 「一般に債務者は、債務内容を正確に把握できない場合には、弁済計画を立てることが困難となったり、過払金があるのにその返還を請求できないばかりか、更に弁済を求められてこれに応ずることを余儀なくされるなど、大きな不利益を被る可能性があるのに対して、貸金業者が保存している業務帳簿に基づいて債務内容を開示することは容易であり、貸金業者に特段の負担は生じないことにかんがみると、貸金業者は、債務者から取引履歴の開示を求められた場合には、その開示要求が濫用にわたると認められるなど特段の事情のない限り、貸金業法の適用を受ける金銭消費貸借の附随義務として、信義則上、保存している業務帳簿(保存期間を経過しているものを含む)に基づいて取引履歴を開示すべき義務を負うものと解すべきである。」

 「そして、貸金業者がこの義務に違反して取引履歴の開示を拒絶したときは、その行為は、違法性を有し、不法行為を構成するものというべきである。」

 

 

12. 平成171215日最高裁第一小法廷判決

 

リボルビング方式の貸付けにおいても、個々の貸付けの時点における残元利金について、貸金業法171項に規定する書面に「返済期間及び返済回数」各回の「返済金額」を記載しなければならない。

 

「確定的な返済期間、返済金額等を17条書面に記載することが不可能であるからといって、上告人は、返済期間、返済金額等を17条書面に記載すべき義務を免れるものではなく、個々の貸付けの時点での残元利金について、最低返済額及び経過利息を毎月15日の返済期日に返済する場合の返済期間、返済金額等を17条書面に記載することは可能であるから、上告人は、これを確定的な返済期間、返済金額等の記載に準ずるものとして、17条書面として交付する書面に記載すべき義務があったというべきである。そして、17条書面に最低返済額及び経過利息を毎月15日の返済期日に返済する場合の返済期間、返済金額等の記載があれば、借主は、個々の借入れの都度、今後、追加借入れをしないで、最低返済額及び経過利息を毎月15日の返済期日に返済していった場合、いつ残元利金が完済になるのかを把握することができ、完済までの期間の長さ等によって、自己の負担している債務の重さを認識し、漫然と借入れを繰り返すことを避けることができるものと解され、確定的な返済期間、返済金額等の記載に準じた効果があるということができる。

前記事実関係によれば、本件基本契約書の記載と本件各確認書等の記載とを併せても、確定的な返済期間、返済金額等の記載に準ずる記載があると解することはできない。したがって、本件各貸付けについては、17条書面の交付があったとは認められず、法431項の規定の適用要件を欠くというべきである。」

 

 

13. 平成18113日最高裁第二小法廷判決

 

利息制限法所定の制限を超える約定利息の支払を遅滞したときには当然に期限の利益を喪失する旨の特約の下では、制限超過部分の支払に任意性がないとして、貸金業法43条のみなし弁済規定は適用されない。

 

 「法431項は、貸金業者が業として行う金銭消費貸借上の利息の契約に基づき、債務者が利息として支払った金銭の額が、利息の制限額を超える場合において、貸金業者が、貸金業に係る業務規制として定められた法171項及び181項所定の各要件を具備した各書面を交付する義務を遵守しているときには、その支払が任意に行われた場合に限って、例外的に、利息制限法11項の規定にかかわらず、制限超過部分の支払を有効な利息の債務の弁済とみなす旨を定めている。貸金業者の業務の適正な運営を確保し、資金需要者等の利益の保護を図ること等を目的として貸金業に対する必要な規制等を定める法の趣旨、目的(法1条)等にかんがみると、431項の規定の適用要件については、これを厳格に解釈すべきである(最高裁平成14年(受)第912号同16220日第二小法廷判決・民集582380頁、最高裁平成15年(オ)第386号、同年(受)第390号同16220日第二小法廷判決・民集582475頁参照)。

そうすると、法431項にいう「債務者が利息として任意に支払った」とは、債務者が利息の契約に基づく利息の支払に充当されることを認識した上、自己の自由な意思によってこれを支払ったことをいい、債務者において、その支払った金銭の額が利息の制限額を超えていることあるいは当該超過部分の契約が無効であることまで認識していることを要しないと解される(最高裁昭和62年(オ)第1531号平成2122日第二小法廷判決・民集441332頁参照)けれども、債務者が、事実上にせよ強制を受けて利息の制限額を超える額の金銭の支払をした場合には、制限超過部分を自己の自由な意思によって支払ったものということはできず、法431項の規定の適用要件を欠くというべきである。」

 「そして、本件期限の利益喪失特約は、法律上は、上記のように一部無効であって、制限超過部分の支払を怠ったとしても期限の利益を喪失することはないけれども、この特約の存在は、通常、債務者に対し、支払期日に約定の元本と共に制限超過部分を含む約定利息を支払わない限り、期限の利益を喪失し、残元本全額を直ちに一括して支払い、これに対する遅延損害金を支払うべき義務を負うことになるとの誤解を与え、その結果、このような不利益を回避するために、制限超過部分を支払うことを債務者に事実上強制することになるものというべきである。」

 「したがって、本件期限の利益喪失特約の下で、債務者が、利息として、利息の制限額を超える額の金銭を支払った場合には、上記のような誤解が生じなかったといえるような特段の事情のない限り、債務者が自己の自由な意思によって制限超過部分を支払ったものということはできないと解するのが相当である。」

 

 

14.  平成19713日 最高裁第二小法廷判決

 

利息制限法の制限超過利息を受領した貸金業者が判例の正しい理解に反して貸金業法18条1項に規定する書面の交付がなくても同法43条1項の適用があるとの認識を有していたとしても,民法704条の「悪意の受益者」推定を覆す特段の事情があるとはいえない。

 

 

15.  平成19717日 最高裁第三小法廷判決

 

貸金業者において貸金業規制法43条1項の適用が認められないときは、当該貸金業者は、同項の適用があるとの認識を有しており、かつ、そのような認識を有することに至ったことがやむを得ないといえる特段の事情がある場合でない限り、「悪意の受益者」であることが推定される。

 

 

16. 平成20118日 最高裁第二小法廷判決

 

1の基本契約に基づく貸付け及び弁済が反復継続して行われた期間の長さや此れに基づく最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付けまでの期間、第1の基本契約についての契約書の返還の有無、借入れ等に際し使用されるカードが発行されている場合にはその失効手続の有無、第1基本契約に基づく最終の弁済から第2の基本契約が締結されるに至る経緯、第1と第2の各基本契約における利率等の契約条件の異同等の事情を考慮して、第1の基本契約に基づく債務が完済されても此れが終了せず、第1の基本契約に基づく取引と第2の基本契約に基づく取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価することができる場合には、第1取引で生じた過払い金を第2取引の貸付金に充当する旨の合意が存在するものと解するのが相当である。

 

 

17. 平成21122日 最高裁第一小法廷判決

 

過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては,同取引により発生した過払金返還請求権の消滅時効は,過払金返還請求権の行使について上記内容と異なる合意が存在するなど特段の事情がない限り同取引が終了した時点から進行するものと解するのが相当である。

 

  

 

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